結論

✅ 空室期間中も経費は計上できる

不動産所得の必要経費は、「その年に不動産賃貸業を営んでいること」が前提です(所得税法37条)。空室かどうかは関係なく、賃貸する意思をもって物件を保有・管理していれば、経費として計上できます。

ただし、経費計上が認められるためには「賃貸業を継続している実態」が必要です。長期空室や自己使用が疑われる場合は注意が必要です(後述)。

空室中に計上できる経費・できない経費

経費の種類 空室中の扱い 補足
管理費・管理委託料 計上できる 空室でも管理会社への委託を継続していれば計上可
固定資産税・都市計画税 計上できる 納税義務は所有者に帰属。入居状況に関係なく計上可
損害保険料(火災保険等) 計上できる 賃貸物件の保険料として計上可。長期前払の場合は期間按分
借入金利息(建物取得分) 計上できる 建物取得のための借入利息は計上可。土地取得分の利息は損益通算制限あり(2-03-③参照)
減価償却費 計上できる 建物は使用・未使用を問わず償却が進む。空室中も計上可
入居者募集費用(広告費等) 計上できる 仲介業者への広告掲載費・礼金の一部など。賃貸意思の証拠にもなる
水道光熱費(共用部分) 計上できる 共用廊下・駐車場等の電気代など。専有部分の光熱費は原則不可
リフォーム・修繕費 要判定 修繕費か資本的支出かの判定が必要(2-04-①参照)
自己使用部分の費用 計上不可 賃貸用途以外に使用している部分の費用は按分が必要、または計上不可

注意が必要なケース

⚠️ 「賃貸する意思がない」と認定されるリスク

以下のような状況では、税務調査で「不動産賃貸業を営んでいない」と認定され、経費計上が否認されるリスクがあります。

長期間(目安:2年以上)空室が続いている
・募集活動の記録がなく、入居者を探している実態が確認できない
・将来的に自己使用・売却を予定していることが明らかな場合
・親族に無償または著しく低い賃料で貸している場合

賃貸意思を示す記録の保存

経費計上の正当性を守るために、以下の書類・記録を保存しておくことを推奨します。

📁 保存しておきたい書類・記録
📄
不動産仲介業者との媒介契約書・更新記録
「いつから募集しているか」を証明する最重要書類
🖥️
不動産ポータルサイトの掲載記録(スクリーンショット等)
SUUMO・HOME'S等の掲載画面を定期的に保存しておく
📧
仲介業者とのメール・連絡記録
内見の問い合わせ対応・条件交渉の記録も有効
🔧
入居促進のためのリフォーム・清掃の領収書
「貸せる状態にする努力」の証拠として有効
💰
管理費・固定資産税の支払記録
通帳・口座明細で管理費用の継続支払いを確認できる
⚠️ 長期空室は早めに対策を

空室が1年を超えてきたら、募集条件(賃料・礼金・敷金)の見直しや、リフォームによる競争力強化を検討することが、経費計上の正当性を守る観点からも重要です。「適正な賃料で積極的に入居者を募集している」という実態を維持することが、税務上のリスク管理につながります。

経費をシミュレーターに入力する
空室中に発生した管理費・固定資産税・保険料・利息・減価償却費は
Tab④(経費入力)にまとめて入力できます。
シミュレーターを開く(Tab④)→
参照法令・通達・根拠
所得税法 第37条(必要経費) 所基通37-1(業務の遂行上必要な経費) 所基通26-9(不動産所得を生ずべき業務の範囲) タックスアンサー No.2080(必要経費になるもの)