修繕費と資本的支出の違い

修繕費
支出した年に
全額経費計上
  • 原状回復・維持管理のための支出
  • 税負担を即年に軽減できる
  • 帳簿処理がシンプル
資本的支出
耐用年数にわたって
減価償却
  • 価値の増加・使用期間の延長
  • 経費化が複数年に分散する
  • 建物と同じ耐用年数で償却

3ステップ判定チャート

以下の質問に順番に答えることで、どちらに該当するかを確認できます。

修繕費 / 資本的支出 判定チャート
Q1. 工事の目的・性質はどちらに近いですか?
Q2. 工事の金額はいくらですか?
Q3. 以下の両方に当てはまりますか?
①工事金額が60万円未満 ②工事金額が物件の前年末取得価額の10%以下
✅ 判定結果
修繕費(一括経費計上)
原状回復を目的とした20万円未満の工事は、支出した年に全額を必要経費として計上できます。
根拠:所得税法施行令181条、所基通37-10
↩ もう一度確認する
✅ 判定結果(形式基準)
修繕費として処理できる可能性あり
20万円以上でも、①60万円未満かつ②取得価額の10%以下の両方を満たす場合、形式基準により修繕費として処理する実務が認められています。
根拠:所基通37-12(2)

⚠️ ただし、この判定はあくまで通達レベルの目安です。税務調査で全額が資本的支出と認定されるリスクが残ります。詳しくは下記の注意事項をご確認ください。
↩ もう一度確認する
📋 判定結果
資本的支出(減価償却)
価値の増加・使用可能期間の延長を目的とした支出、または形式基準を超える工事は、資本的支出として建物と同じ耐用年数で減価償却します。
根拠:所得税法施行令181条、所基通37-10
↩ もう一度確認する

具体例で確認する

修繕費
給湯器の交換(15万円)
故障した設備を同等品に取り替える原状回復。20万円未満のため修繕費。
修繕費
外壁の劣化補修塗装(40万円)
防水・劣化回復が目的。形式基準(60万円未満かつ取得価額の10%以下)を満たせば修繕費扱い可。
資本的支出
エレベーター新設(250万円)
既存建物にない機能の追加。価値・利便性が増加するため資本的支出。
資本的支出
耐震補強工事(150万円)
使用可能期間の延長・資産価値の増加を目的とした支出のため資本的支出。
修繕費
屋根の防水工事(18万円)
雨漏り防止のための原状回復。20万円未満のため修繕費。
資本的支出
バリアフリー改修・手すり設置(80万円)
機能追加による価値向上。60万円超でかつ形式基準超のため資本的支出。

「形式基準」の法的根拠とリスク

修繕費か資本的支出か明確に区分できない場合、実務では形式基準(所基通37-12)が用いられます。

根拠条件処理
所基通37-10
実質基準
原状回復 or 価値増加の判断 実態に応じて修繕費または資本的支出
所基通37-12(1)
形式基準①
一つの工事が20万円未満 修繕費として処理できる
所基通37-12(2)
形式基準②
60万円未満かつ前年末取得価額の10%以下 修繕費として処理できる(実務的な目安)
所基通37-12(3)
継続適用基準
区分が困難な場合に継続して工事代金の70%を修繕費・30%を資本的支出として按分 継続適用が条件。初年度だけ有利な方を選ぶことは認められない
⚠️ 形式基準・70%基準を使う場合のリスクと自己責任

形式基準(所基通37-12)はあくまで通達(行政指針)レベルの判断基準であり、法律(所得税法・施行令)に明文規定があるわけではありません。

税務調査では、「実態としては価値を増加させる支出だ」と判断されれば、全額が資本的支出として否認されるリスクがあります。特に以下の場合は注意が必要です:

・外観や性能が明らかに向上する工事
・賃料の値上げを行った直後の大規模修繕
・形式基準ギリギリの金額の工事

形式基準を使って修繕費処理をする場合は、工事内容・目的を示す書類(見積書・工事写真・契約書)を必ず保存しておくことが重要です。最終的な判断は納税者ご自身の責任において行ってください。

📋 70%/30%按分(継続適用基準)の注意点

「区分が困難な工事代金の70%を修繕費、30%を資本的支出」とする按分は、継続して同じ方法を適用することが条件です(所基通37-12(3))。
その年だけ有利な方法を選んで翌年は別の方法を使うことは認められません。一度採用したら継続適用が必要です。

判定結果をシミュレーターに入力する
修繕費として確定した金額は、Tab④(経費入力)の「修繕費」欄に入力してください。
資本的支出は Tab③(減価償却)で別途入力します。
シミュレーターを開く(Tab④)→
参照法令・通達・根拠
所得税法施行令 第181条(資本的支出) 所基通37-10(修繕費と資本的支出の区分・実質基準) 所基通37-12(修繕費の判定・形式基準) タックスアンサー No.2100(減価償却のあらまし)