退去・原状回復費用の
税務上の取り扱い

入居者が退去した後の修繕・クリーニング費用は、誰が負担するかによって処理が変わります。大家負担分は修繕費として経費計上できます。

結論

大家負担分の原状回復費用は修繕費として全額経費計上できる。敷金から充当した場合は、修繕費(経費)と敷金充当額(収入)を両建てで計上する。

費用負担の3分類

区分 具体例 負担者 経費計上
経年劣化・通常損耗 日焼けによる壁紙の変色、畳の自然な傷み、エアコンの自然故障 大家 経費OK
入居者の故意・過失 タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷・臭い、故意による穴・破損 入居者 経費NG
契約特約による取り決め 「退去時クリーニング費用は入居者負担」等の特約がある場合 特約次第 特約による
国交省ガイドラインについて

負担区分の詳細は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)」が基準となっています。長期入居ほど経年劣化の割合が大きくなるため、大家負担が増える傾向があります。入居者との認識のズレがトラブルの原因になりやすいため、入居時に費用負担のルールを明確にしておくことを推奨します。

敷金との相殺処理(3ステップ)

1
大家負担分を修繕費として経費計上する
大家負担分の原状回復費用の全額を修繕費(必要経費)として計上する。敷金から充当した金額も含めて計上する。
例:原状回復費用(大家負担)120,000円 → 修繕費 120,000円を計上
2
大家負担分に充当した敷金を収入として計上する
預かっていた敷金を大家負担の修繕費に充当した場合、その充当額を「不動産収入(その他)」として収入計上する。修繕費(経費)と収入が同額となるため、所得への影響はゼロになる。
預り敷金 150,000円 / 原状回復費用(大家負担)120,000円の場合
→ 敷金充当額 120,000円を収入計上(不動産収入その他)
→ 修繕費 120,000円を経費計上(収支はプラスマイナスゼロ)
→ 残り 30,000円を入居者へ返還
3
入居者負担分を敷金から差し引いた場合も収入計上が必要
入居者の故意・過失による損傷の修繕費を敷金から差し引いた場合、その金額は敷金の返還免除(収入)として計上する。この場合の修繕費は大家の経費にならない。
例:タバコのヤニ汚れ修繕(入居者負担)80,000円を敷金から差し引いた場合
→ 敷金充当額 80,000円を収入計上(不動産収入その他)
→ 修繕費は計上しない(入居者負担のため経費不可)
修繕費・資本的支出の区分にも注意

原状回復費用であっても、原状より明らかに価値が上がる工事(設備のグレードアップなど)は資本的支出として減価償却が必要になります。判断基準は「修繕費か資本的支出か(2-04-①)」を参照してください。

参考法令・資料:所得税法第26条、所得税基本通達36-7(敷金・保証金)、所得税基本通達37-12(修繕費)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」