事業的規模(5棟10室)を満たしたときに何が変わるか
イベント05:長期保有期 / 論点 3-05-③
✓ 結論

5棟10室基準を満たすと"事業的規模"となり、青色申告と組み合わせることで大きな節税効果が得られる。特に給与所得を上回る赤字(純損失)が生じた年は、その超過分を翌年以降3年間繰り越せることが重要なメリットとなる。ただし白色申告のままでは恩恵をほとんど受けられず、青色申告への切替えが前提となる。

事業的規模になると変わること
項目 事業的規模でない
(青色申告)
事業的規模
(青色申告)
青色申告特別控除 所法57の2 最大 10万円 最大 65万円
(電子申告・e-Tax)
純損失の繰越控除 所法70条 可(3年間) 可(3年間)
給与を超える赤字が対象
青色事業専従者給与 所法57条 不可
貸倒損失の必要経費算入 不可
資産損失(除却等) 不動産所得の
金額が上限
全額必要経費
算入可
純損失の繰越とは——給与所得を超えた赤字だけが対象
例:給与所得500万円・不動産所得△700万円の場合
給与所得
+500万円
不動産所得(赤字)
△700万円
↓ 損益通算
通算後の内訳
△500万円(相殺済)
△200万円
← 給与所得で相殺した500万円は繰越不可  ← この200万円が「純損失」として3年間繰越可
⚠ 赤字の年こそ申告を継続すること

純損失の繰越控除は、赤字の年も確定申告をしていることが条件(所法70条2項)。申告を怠ると繰越の権利が失われる。不動産所得が赤字の年こそ、申告を継続する意義が大きい。

※ 土地取得分の借入金利子相当額は損益通算後の繰越から除外される(措法41条の4)。詳細は担当税理士にご確認ください。

5棟10室の判定基準(所基通26-9)
いずれか一方を満たせばよい
棟数基準
貸家(一戸建て等)
5棟以上
室数基準
マンション・アパート等
10室以上
※ 混合の場合は換算:貸家1棟=貸室5室に相当。駐車場は5台=1室換算(単独では不算入)。
⚠ 白色申告のままでは恩恵を受けられない

65万円控除・専従者給与・純損失の繰越控除はいずれも青色申告の承認を受けていることが前提(白色申告では純損失の繰越不可)。5棟10室を満たしたタイミングが、青色申告への切替えを検討する転換点となる。

5棟10室ラインに近づいてきた方へ
切替えのタイミング・手続き・今後の申告体制まで、個別の状況をふまえたアドバイスが必要です。担当税理士にご相談ください。
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参考法令:所得税法第70条(純損失の繰越控除)、第57条(青色事業専従者給与)、第57条の2(青色申告特別控除)、所得税基本通達26-9(事業的規模の判定)、租税特別措置法第41条の4(土地等の取得借入金利子の制限)